■■■■■ 刀剣の構成・部位の解説 ■■■■■
●ヒルト | hilt | / | 柄 |
●ポンメル | pommel | / | 柄頭 |
| | | | ●グリップ | grip | / | 握り |
| | | | ●ガード | guard | / | 鍔 |
●ブレイド | blade | / | 剣身 |
●タング | tang | / | 茎・中子 |
| | | | ●ショルダー | shoulder | / | 刃区・棟区 |
| | | | ●フラー | fuller | / | 樋 |
| | | | ●カッティングエッジ cutting edge / 刃先 |
| | | | ●ポイント | point | / | 切先 |
■■■ ヒルト hilt / 柄 ■■■
【柄頭】【握り】【鍔】を含めた刀剣を扱うための部位全体を示します。
【柄】は刀剣を扱うのにきわめて重要な部位で、その刀剣の使用用途に応じて様々な工夫がされています。おおむね片手で扱う物は10cm〜15cm、両手で扱う物は30cm以上の長さがあり、柄の重量が全体の何割を占めているかで刀剣の性質は大きく変化します。
基本的に柄の占める重量の割合が大きいほど操作性は向上しますが斬撃の威力は下がり、逆に柄の占める重量の割合が小さいほど(剣身の占める割合が大きいほど)大きな破壊力を発揮できる反面、使用者の体感する重量は大きくなり扱いが難しくなります。
剣は使用者の権威を示すという意味から特に目に触れやすい柄に権力と財力を誇示するための華美な装飾がされる場合も多くありました。
■ポンメル pommel / 柄頭
柄の先端の部分をさします。装飾のしやすい部位でもあり、鍔と合わせてその剣の由来を象徴する象眼などの装飾がされていたり、キリスト教圏では聖遺物などが収められていることもあります。
西洋の両刃剣では柄に剣身を固定するパーツとして、ネジ状の中子が柄を貫いて柄頭で固定するものが一般的ですが、東洋やアジアの刀剣の場合はその役割を目釘で固定するものもあり柄頭は装飾であったり、柄を保護するための部品である例もあります。
運用面では、特に斬撃に重点を置いた東洋やアジアの刀剣の場合、斬撃を繰り出す際の遠心力で剣を取り落とすのを防ぐ工夫がされているものがあります。また、柄頭に重量を持たすことで刀剣全体の重心のバランスに影響を与え操作性を向上することが出来ます。
■グリップ grip / 握り
柄の大部分を占める部位です。使用者が直接手にする部分であるため、滑りにくいよう細い鎖や革紐などを巻いていたり、溝が彫られたりする場合があります。刀剣の使用用途に応じて扱いやすいよう工夫されていて、素材も木製のものから象牙、貴金属など様々です。
柄を形成するのに最低限必要な部位で、種類によっては柄頭や鍔が無く、握りだけで柄を構成している物もあります。
■ガード guard / 鍔
相手の攻撃等から手を保護する部位で、大概丈夫な金属が使われています。柄頭同様装飾のしやすい部位でもあり、その剣の由来や象徴する意味を示す象眼などの装飾がされてる場合が多くあります。
手全体を覆うようにかぶさる護拳や、板状の物、棒状で剣の垂直方向に突き出た物など地域、年代、使用法などで様々な形状のものがあります。
■■■ ブレイド blade / 剣身 ■■■
剣を剣たらしめている部位であり、ほぼ全体が殺傷能力を備えています。基本的に全体が金属製で、酸化(鋼化)させて強度を増しています。地域、時代によってさまざまな鋼化の技術が開発され、現代の金属技術の発達は全て剣身を鍛える技術に端を発していると言っても過言ではありません。
刀剣の使用法によって形状が変化し、刺突を重視した物はおおむね真っ直ぐで鋭い切先を備えています。それに対して斬撃を重視した物は、切り付けた対象に対して接触面を小さく力が集中するように曲線を描いていたり、重量を切先側に集中させることで破壊力を強化するなど工夫がされています。
基本的に剣身の重量が重たいほど斬撃の威力は強化されますが、使用者の体感する重量は大きくなり操作性が下がるため攻撃の連続性が損なわれます。
■タング tang / 茎・中子
タング(和名では“茎”、または“中子”と呼びます)は剣身を柄に固定するために重要な箇所です。通常、鍔を貫いて柄の中央を通って柄頭へとつながります。
柄から剣身が抜けないように地域や時代によって、握りの部分で数箇所釘で固定する方法や柄頭でネジ状の止め金で固定するなど、いくつかの方法が取られました。
日本刀ではこの部分に銘や刀身の格を記してある場合がよくあります。
■ショルダー shoulder / 刃区・棟区
ショルダー(片刃剣の場合は刃先側を“刃区”、背の側を“棟区”と区別します)は中子と剣身との間の段差のことです。実質上、剣身と柄の境界線になります。
■フラー fuller / 樋
剣身の面に彫られた溝で、剣身自体の強度を損なわず重量を軽くするための工夫です。
また、血溝とも言われ、相手に深く刺さった剣が抜けにくくなること防ぐという役割もあるとされています。
■カッティングエッジ cutting edge / 刃先
刃そのものを指します。斬撃を行うために必要な部位で、性能を維持するためには絶えず手入れをしなくてはならないデリケートな部位でもあります。
一般的に刺突に適した西洋の直剣に比べ、斬撃を重視した曲刀はその性質上、精度の高さが求められました。特に日本刀は極めて優れたカッティングエッジを備えています。
西洋の両刃剣も鋭いカッティングエッジを備えていますが、板金鎧に対しては役に立たないため合戦用の刀剣にはかなり鈍いものが使われていました。
■ポイント point / 切先
剣身の先端部分のことで、刺突攻撃を行うために必要な部位です。
切先の形状からもその刀剣の使用法を推量ることができ、西洋の両刃の直剣においては力が直接一点に集中することから、最大の破壊力を発揮することができます。
刺突攻撃は致命傷を与えやすく、刀剣によってはカッティングエッジがなく鋭い切っ先だけを備えた刺突専用の物もあります。
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